2026-02-15
大学の入試問題で人間を凌駕する成績を収めていることから分かるように、知識の蓄積や再現・適用といった領域ではLLMのほうが優れていると言える。
こうした領域において、人間がLLMに指示を出して考えさせるだけでは、人間が立てる問いの質がLLMの能力を制限してしまうことになる。
LLMが得意とする領域はLLMに任せ、人間は別の役割を担うほうが高い成果を上げられる。
では、人間がLLMと協働するにあたり、人間は何をすべきか?
人間の役割は、特定のコンテキストを超えた情報の結合、つまり新たな「問い」を立てることではないかと私は考えた。
LLM は、与えられたコンテキストから、統計的な確率分布に基づいて次の単語を予測する「収束的」なプロセスを得意としている。
これは、学習データに含まれるパターンを高精度で再現・応用できる一方で、学習データの統計的分布を大きく逸脱した発想は生まれにくいということでもある。
温度パラメータを上げることでバリエーションを増やすことはできるが、それも基本的には学習データの範囲内での多様性である。
最新のLLMは推論能力が向上し、複数ステップの思考やメタ認知的な問いかけも可能になっている。
それでも、現時点では「与えられた問いに対して精度の高い回答を返す」ことが主な強みであり、問いが存在しない状態から全く新しい視点を自発的に提案することは、まだ人間の方が優れている領域だと私は考える。
例えば、新幹線の騒音問題を、カワセミのくちばしの形状という全く別の領域から発想を得て解決したという事象は特徴的である(新幹線500系のバイオミメティクス)。
これは新幹線の騒音を立てにくくすることと、カワセミが水しぶきを上げないという現象を抽象的に「似ている」と捉えることができたからこその結果だと考える。
他にも、マジックテープの開発者がゴボウの実が犬の毛にくっつく様子からヒントを得た例や、蓮の葉の撥水性から超撥水塗料が開発された例など、自然界と工学の結びつけから生まれたイノベーションは数多い。
身近な例で言えば、日常の中で「この業務のフロー、料理のレシピの考え方に似ているな」と気づいて業務改善のヒントを得る、といったことも同様だと考えている。
一見無関係な経験同士を結びつけることで、新しい視点が生まれる。
この結果を考察すると、最初の「カワセミのくちばしを応用できるかもしれない」という問いを立てるのは、現時点では人間の方が得意な領域だと考える。
一方で「鳥のくちばしの形状で応用できるものはないか?」といった問いや、「カワセミのくちばしの形状が応用できるか?」という問いがあれば、LLMを使い解決まで効率よく進めることができる可能性が高い。
しかし、最初の問いがなければ、LLM自らがこの解決策を提案する可能性は限りなく低いと思われる。
つまり、人間の役割は「新しい問いを立てる」ことであり、これが私の考える「発想」である。
この「発想」を最大化するためには、以下の2つが重要であると私は考えている。
発想は既存の知識や経験の組み合わせから生まれるため、そもそもインプットがなければ発想は出てこない。
自分の専門外の分野にも意識的に触れることで、異分野を結びつける機会を増やすことが重要だと考える。
そのために、読書で専門外の分野の本を読むなど、インプットの質を変えてみようと思う。
脳が意識的なタスクに集中していないとき、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が活性化し、異なる記憶や情報を無意識に結びつける働きをする。
これは神経科学的に実証されている現象で、シャワー中や散歩中にアイデアが浮かぶのはこのためだと言われている。
このDMNを活性化するために、意図的に何もしない時間を散歩などで作ろうと思う。
これは、現時点のLLMの能力を観察した結果として考えたことであり、将来のLLMの進歩により、人間が担うべき「発想」もLLMが代替する可能性はある。
しかし、LLMが向上する中で、物理的にな肉体を持つ人間だからこそできる発想力が最もLLMに代替されにくいと考え、この領域を私は伸ばしていきたいと考えている。